カスタマーサクセスが主導する顧客伴走
カスタマーサクセスの顧客対応は「顧客を支援する」というより「顧客のために伴走する」感覚がしっくりきます。
しかし、ただ横で一緒に走ればいいというわけではありません。
カスタマーサクセスでの顧客伴走は、伴走という表現を使いつつも、顧客をゴールに到達させるための主導もしなければならないのです。
この記事では、カスタマーサクセスにとって重要な「顧客伴走」とよばれる取り組みに焦点をあてて解説します。
目次
なぜ顧客支援でなく顧客伴走なのか?
カスタマーサクセスの活動を「顧客伴走」と表現する理由を理解するためには、まずカスタマーサクセスが取り組むべきゴールを知らなければなりません。
カスタマーサクセスの活動のゴールは、自社サービスを提供することで顧客の事業を成長させ、その成長に伴い自社を成長させていくことです。
あくまで自社成長のため、顧客にサービスの価値を最大限享受してもらうのです。
カスタマーサクセスは顧客の事業成長に貢献できるものの、事業責任まで請け負うことはできません。しかし自社サービスのことを顧客よりも理解しています。
だからこそ顧客がサービスを正しく使いこなせば、必ず顧客成長を通じて自社成長ができる確信をもっているのです。
カスタマーサクセスは自社サービスを顧客自身が使いこなしてもらう最大限の努力をしています。ではカスタマーサクセスは顧客伴走のみで顧客支援はしないのでしょうか。
いいえ、そうではありません。
顧客伴走は顧客支援の活動の中に存在しています。顧客支援だと「顧客の代わりに対応する行為」を思い浮かべるかもしれませんが、それは「代走」と言い換えられます。
顧客支援の活動の中で代走や伴走といったカスタマーサクセスの対応方法が存在しています。
つまりカスタマーサクセスは全体として顧客支援をしますが、顧客支援からは想起しづらい「顧客伴走」を重要視しているのです。
では顧客伴走をなぜ重要視するのか。
逆説的になりますが、カスタマーサクセスの最終ゴールは「顧客支援をやめること」だからです。顧客を自分で走れる「自走」状態まで到達させることがカスタマーサクセスの最終目的になります。
顧客伴走が重要な理由
もしカスタマーサクセスが顧客の業務をまるごと請け負って代走すれば顧客からは感謝されるでしょう。しかし目先の顧客満足のために、顧客の困りごとを顧客の代わりに対応していると顧客は自走できないままになってしまいます。
ただし馴染みのない「顧客伴走」を顧客に実施するとしても、顧客がカスタマーサクセスにどんな役割を期待すればよいかが明確になっていません。
これはカスタマーサクセスという新しい職種の課題です。
カスタマーサクセスは顧客に他の職種と混同されることもあるでしょう。特に「代走」という行為はカスタマーサクセス以外の職種で当たり前に行われています。
例えばBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)やコンサルティングのように、顧客が本来やるべきことを代走して価値を提供する職種はすでに世の中に定着しています。
このような既存職種からカスタマーサクセスの役割も連想されがちです。
カスタマーサクセスはカスタマーサポートと名称や役割が類似している上にコンサルティングやBPOのような側面も併せもつため、顧客から「カスタマーサクセスは無償のコンサルティング」と誤解されてしまう場合もあります。
しかしカスタマーサクセスのような新しい職種ではBPOやコンサルティングほどのリソース規模はないため、代走を主体とする役割を担うことは現実的ではありません。
カスタマーサクセスを取り巻く現状を考えても、顧客に自走してもらうための伴走活動に注力することが必要です。
顧客伴走の3パターン(ハイタッチ、ロータッチ、テックタッチ)
顧客伴走はカスタマーサクセスに限ったものではなく世の中の職種でも多く見受けられます。
例えば塾講師は生徒の能力や成果を最大限引き上げるために伴走しています。なぜなら実際に勉強して志望校に合格するのは塾講師ではなく、顧客である生徒自身だからです。
カスタマーサクセスでは具体的にどのような伴走が考えられるでしょうか。ここでは顧客接点軸のハイタッチ、ロータッチ、テックタッチに分けて考えます。
まずハイタッチではスポーツジムのパーソナルトレーナーのような対応になります。続いてロータッチは授業する教師のイメージが近いでしょう。最後のテックタッチは不特定多数に対応するアナウンサーです。
カスタマーサクセスの基本であるハイタッチでは顧客に寄り添う必要がありますが、テックタッチは情報を適切に伝えるだけで十分です。これら顧客接点の違いによって伴走で求められる情報提供の密度と頻度は異なります。
いずれのパターンも顧客にサービス活用のイメージを正しく理解してもらうことが目的です。実際に多くの場合、顧客にとって難しいところはサービス自体の使い勝手や利用方法ではなく、業務へのサービス適用イメージをもつところです。
そのためカスタマーサクセスが顧客の業務状況を理解して、伴走パターンを使い分けることが重要になります。
カスタマーサクセスは「良い空気」になろう
顧客伴走の前提として求められることは、顧客理解、自社のサービス理解、組織理解です。これが不十分だと表層的な課題への場当たり的な対応に終始し、真の課題解決につながる伴走ができなくなります。
カスタマーサクセスが伴走を通じて達成すべきことは、顧客自身が本質的な業務課題の解決に向けて自走する動機づけを行うことです。動機づけなので顧客自身に「やりたい!」という気持ちになってもらわなければなりません。
こういった働きかけをする能力はファシリテーターに求められる資質に近いでしょう。そう考えるとカスタマーサクセスの伴走における取り組み姿勢や対応手法について、ファシリテーターから学ぶべきポイントがあります。
良いファシリテーターの資質の一つに「空気のような存在になれる」ことがあります。そのためには議論の参加者にファシリテーターの存在を感じさせずに、自由に議論できる状態を作り出せる能力が必要です。この状態を作り出せると参加者はファシリテーターの立ち位置を気にしなくなっています。
この立ち位置こそがカスタマーサクセスにとって重要になります。
カスタマーサクセスは顧客の前に立って代走もすれば横に並んで伴走もします。ときには顧客自身が自走するのを後ろから見守ることもあるでしょう。顧客に違和感を抱かせないよう自在に立ち位置を変えなければならないのです。
これが役割の期待値が明確なコンサルティングやBPOの場合では、顧客の前にいる代走の立ち位置を常に求められます。
もし代走しなければならないタイミングで横にいると、その立ち位置に顧客が違和感を覚えてしまうでしょう。役割が明確であるがゆえに立ち位置も自ずと規定されてしまうのです。
これが「空気のような存在」すなわち「良い空気」になっていれば前後左右のどこにいても自然です。
ただし役割と立ち位置の選択を誤ると、顧客から「仕事をしていない」と判断されてしまうため、カスタマーサクセスは「良い空気」を維持し続ける必要があります。
カスタマーサクセスは「伴走だけ」ではいけない
顧客伴走で注意しなければならないことは「カスタマーサクセスは伴走しなければならない」と固定観念をもってしまうことです。
サービスを活用して顧客が業務成果を出すことが顧客伴走のゴールになります。もしオンボーディングでのノウハウ提供だけで顧客がサービス活用できるならば、カスタマーサクセスが率先して代走すべきです。
伴走だけにこだわらず代走を取りいれるバランス感覚こそが顧客伴走を成功させる重要なポイントになります。
これは顧客の状況を正しく理解した上で必要な支援を見極められるようにならないと身に付きません。
先ほどの顧客接点軸(ハイタッチ、ロータッチ、テックタッチ)で分けた伴走のパターンでさえ、顧客状況によって対応を調整する必要があります。顧客にとって意味のある施策は常に変え続けなければなりません。
このようにバランス感覚は伴走を成功させるために重要であるものの、さじ加減はケースバイケースです。
しかし伴走か代走のどちらを選択すべきかの判断基準には重要なポイントがあります。それは「自分たちの責任範囲がどこにあるか」を意識することです。
サービスについてはカスタマーサクセス側の責任範囲ですが、業務内容については顧客側の領域です。
もし顧客の責任領域に対してカスタマーサクセスが安易に成果を約束してしまうと、伴走すべきところで代走を迫られて代走と伴走のバランスが崩れる恐れがあります。
責任範囲をもとに業務分担を顧客と共有することが顧客支援を成功させるために必要です。
このときにカスタマーサクセス側で注意しなければならない点は、顧客業務が「無理ゲー」になっていないかを業務プロセスから事前に判断しておくことです。
カスタマーサクセスは適切な責任範囲を設定した上で、代走と伴走のバランスを取りながら顧客が自走できる状態まで導く支援をします。
顧客の状況に応じて支援のスタイルを柔軟に使い分けることが最も大切なのです。
顧客とフラットな関係を築く
顧客伴走ではバランス感覚以外に顧客とフラットな関係を築くことも重要です。フラットな関係とは互いの立場が違いながらも同じ目的を共有できている状態をいいます。
同じ目的を共有するからこそ、目的達成のために各自がそれぞれの役割に全力で取り組めるのです。
もし顧客支援をするときに上下関係があると伴走が難しくなります。顧客が上位者になると、カスタマーサクセスマネージャー(CSM)は顧客側の要望に応えるために代走を迫られてしまうからです。
代走が悪いわけではありませんが、これを続けてしまうと顧客は自走できなくなりCSMの負担は減りません。
CSMが代走すればするほど自分の首を締めかねない状況を作り出してしまうのです。
カスタマーサクセスではフラットな関係性構築と本質的な顧客理解ができれば、顧客のコンテクストを踏まえた正しいアクションが取れるようになります。例えば顧客課題の根本原因を解決するために反対意見を伝えるなどです。
このように顧客とフラットな関係を築くことはカスタマーサクセスにとって重要です。
伴走できる「仲間意識」を作る
フラットな関係で顧客伴走できれば、顧客とのコラボレーションは全体として大きな成果を得られるでしょう。
もし顧客がやるべき仕事とCSMがやるべき仕事の範囲が重なると効果が小さくなってしまうため、両者の役割をそれぞれ果たすことが大切です。
このコラボレーション効果を最大化するためには双方の信頼関係が欠かせません。もしCSMが顧客から信頼されなければ伴走は難しくなります。
この信頼関係を築くためには顧客に向き合う3つの考え方があります。
1つ目は顧客課題に向き合ってCSMの存在理由を認識してもらうことです。具体的には顧客の不得意領域を優先的にサポートするなどが考えられます。
2つ目は顧客と困難を共にすることです。顧客が抱える難易度の高い問題を一緒に取り組めば、同じ悩みと解決に向けた試行錯誤を共有できるため顧客との信頼関係が醸成されます。
3つ目は顧客のトラブルシューティングを迅速かつ真摯に実施することです。顧客評価をネガティブからポジティブにひっくり返せるくらいのトラブル対応ができれば、そこから強固な信頼関係が構築できるでしょう。ただトラブルは起こさないことが大事であり、3つ目はないに越したことはありません。
信頼関係が一定レベル以上になると、CSMは顧客利益のために敢えて苦言を伝えられるようになります。ここまでの関係が築ければ既存組織の枠を超えた「同じ目的に取り組む仲間であるという意識」が強くなっているでしょう。
この「仲間意識」こそが伴走を可能にする重要な要素に他なりません。
「答え」より「意見」が重要に
仲間意識とは伴走や代走などの顧客支援を通じて徐々に強くなっていくものです。当然ですが自分の背中を預けられるほどの信頼感が急に生まれるわけではありません。
ただし「顧客が自分のことを信頼している」かどうかの兆しは顧客の反応から分かります。
打ち合わせでの言葉づかい、相談される内容など多々ありますが、最も分かりやすいものは顧客が「答え」ではなく「意見」を求める態度に変わるときでしょう。
それは顧客が既存の「答え」があると思い単純にCSMに問い合わせている段階を経て、よりCSMを信頼している段階に上がっているといえます。
顧客がCSMに「意見」を求める理由は、顧客自身も答えが見えず一緒に考えて見つけていきたい、顧客としての意思や決断は決まっていながらも信頼できる仲間としてCSM個人の考えを聞いてみたいと思うからです。
この段階になると「某社のCSM」という肩書きから「Aさん」という個人として認識される状態になっています。この変化から顧客はCSMに対して、仲間としての個人的な意見を聞きたくなるほどの信頼を寄せていることが分かります。
これこそフラットな関係です。
相性問題を乗り越える
顧客伴走ではフラットな関係が重要ですが、それを追求することでカスタマーサクセスは新たな悩みを抱えることになります。
それは顧客との相性問題です。人によって合う顧客と合わない顧客がでてくるでしょう。
カスタマーサクセスとして顧客伴走をより良くさせるためには、相性の良い顧客とCSMを組み合わせるといった相性問題にも組織として向き合う必要があります。
相性問題に向き合うジレンマ
顧客との相性問題を踏まえてCSMの人材配置をすればするほど、組織的な対応や仕組みを作ることが難しくなります。しかし組織としては、すべてのCSMがどのような顧客に対しても同水準の顧客伴走の成果を出せるようにしなければなりません。
つまり組織として相性問題に向き合っていくと、顧客特性に合わせた対応をする一方で、誰が担当しても一定以上の成果を出さなければならないというジレンマに陥ってしまうのです。
ここから抜け出すには相性問題に対する認識を変える必要があります。
顧客伴走では顧客が自走に至るまでの中間目標を顧客と共に走りながら達成していきます。相性問題は顧客伴走において発生しますが、達成すべき中間目標は相性の良し悪しに関係なく変わりません。
つまり顧客との相性問題はCSMの伴走行為に対してのみ生じるのです。
そう考えると顧客とCSMの相性問題をマネジメントすることこそが組織観点で顧客伴走を成功させる取り組みになります。
相性を可視化する
組織観点で伴走を成功させるマネジメントのためには、まず相性問題の可視化に取り組むべきです。なぜなら相性問題の多くは「合う・合わない」という肌感覚で担当者をアサインすることにとどまっているからです。
個人の特性を可視化するパーソナリティ診断は数多く存在します。
例えばストレングスファインダーのように多くのビジネスパーソンが利用している有名なパーソナリティ診断は、用意された質問に答えるだけでその人の特性(強み・弱み)が明確になります。利用実績も豊富なので診断結果の信頼性も高いでしょう。
このようにパーソナリティ診断を用いれば、定量的に表現することが難しい相性問題も可視化できます。
しかし自組織が相性問題に取り組みたいがために、顧客にパーソナリティ診断をお願いすることは難しいでしょう。そのため自社CSMのパーソナリティを把握する目的で使い始めることをオススメします。
カスタマーサクセスのリーダーがパーソナリティ診断を活用できれば、メンバーの特性を理解する時間を大幅にショートカットできます。
新たに加入したCSMの特性がすぐに把握できることは非常に魅力的ではないでしょうか。
また顧客に対してパーソナリティ診断ができなくても、伴走を通じて相手の特徴や個性が徐々に分かってきます。そうすると相性の良いCSMをアサインしやすくなります。
このように個人のパーソナリティを可視化すると伴走の相性問題にも組織的に対応できるのです。
定量的な自己理解が組織力を高める
人の強みは自己評価ではなく他者評価によって決まるため、パーソナリティ診断は自己理解にも役立ちます。
自分の強みを明確に理解している人は案外少ないものです。よって他者からフィードバックを受けることで「自分が評価されている強みはこれなのか」と初めて理解できます。
もしフィードバックしてくれる相手や自分が評価されるようなアウトプットを出す機会に恵まれないと、評価を自覚できる機会がなかなか巡ってきません。
そのためパーソナリティ診断を受ければ客観的な評価を得られて自分の強みをすぐに理解できます。
自分の強みをまだ自覚できていないならば正しい自己理解ができ、自分の強みをすでに把握しているならば再確認できます。再確認で思いがけない強みを発見できるかもしれません。
また正しく自己理解をしていると自分の強みを言語化でき、それにより相手と共有しやすくなります。言語化した内容はパーソナリティ診断による客観性の高いものになっているため、他者評価との齟齬が生じにくく相手も納得しやすいでしょう。
さらに正しい自己理解はチームワーク力の向上にもつながります。
パーソナリティ診断によって各人の強みが可視化できると、それぞれの得意な仕事に専念できるタスク割当が可能になります。
つまり「餅は餅屋」の発想でお互いに強みを発揮できる仕事に取り組むことで、お互いの弱い部分を補完できるパフォーマンスの高いチームになるのです。
このようにパーソナリティ診断による定量的な自己理解は組織力の向上に役立ちます。
相性問題をマネジメントする
CSM一人ひとりの特性が可視化できれば相性の良い顧客伴走がしやすくなります。
例えばチーム内に分析が得意なメンバーがいた場合、CSM全員に担当顧客をアサインするのでなく分析が得意なメンバーは後方支援を担当し、コミュニケーション力が高いメンバーは担当顧客を増やす方針にしてもよいでしょう。
また顧客の思考タイプに応じてアサインするCSMを変更するなどチーム編成も柔軟に対応しやすくなります。
特にカスタマーサクセスの組織立ち上げや急拡大の時期はメンバーの特性把握が難しくなるため、事前に準備しておけば肌感覚に頼ったマネジメントを避けられるはずです。
ただ、このように相性問題をマネジメントするためには注意しなければならないことがあります。それはパーソナリティ診断を正しく活用できる人材との連携です。
パーソナリティ診断は設問に答えていくだけで自分の特性結果が表示されるため、非常にわかりやすくとっつきやすい反面、組織設計に活かすには人材開発のノウハウが必要になります。
診断結果を正しく扱える人材がいなければ効果を生み出しやすいメンバーの掛け合わせに失敗してしまうでしょう。
もし人材開発のノウハウをもつ人材が自社にいないなら外部に頼ることも得策です。ストレングスファインダーであれば認定コーチ制度があるので、簡単にプロフェッショナルにコンタクトできます。
顧客伴走のゴールは「伴走をやめる」こと
これまで顧客伴走を成功させるために必要な条件を中心に説明してきました。ここで今一度、顧客伴走のゴールについて取り上げましょう。
顧客伴走のゴールは「カスタマーサクセスが顧客伴走をやめる」ことです。つまりCSMが顧客伴走を通じて「顧客が自走できる状態にする」ことを意味します。
ゴールを達成するためには、顧客が自走できる走り方をカスマターサクセスが教えるだけでは不十分です。走り方をどれだけ教えられても、顧客自身が「走りたい」という気持ちにならなければ自走状態に到達できません。
逆に気持ちだけあっても走り方が分からなければ、その気持ちはいずれ消えてしまいます。カスタマーサクセスは顧客に走り方を教えながら、顧客の走りたい気持ちに火を付けなければならないのです。
顧客に熱量を与えよう
顧客を自走へと導くには、走り方を教えることに加えて顧客の走り続けたい気持ちに火をつける(熱量を保つ)ことが必要になります。
走り方とは顧客が利用するサービスの活用ノウハウです。
顧客が自身でサービスを使いこなせるようカスタマーサクセスがサポートしなければなりません。ここは顧客の問いに「答える」領域なので相性問題を乗り越えずとも支援が可能です。
一方で熱量を保つ活動には相性問題が出てきます。
熱量を保つためには顧客に業務解決の動機づけを行わなければなりません。具体的には上長に成果報告する QBR (Quarterly Business Review)の設定や、ユーザー会で取り組みを発表してもらうといったサービス活用の「動機づけの場」を提供していくなどです。
顧客に熱量を与えるにはフラットな関係が不可欠であり、顧客から意見を求められる状態を作る必要があります。そのためには顧客との相性問題に取り組まなければなりません。
これまで肌感覚で取り組んでいたことをマネジメントしなければならないとなると気が重いかもしれませんが、相性問題を乗り越えた先に想定外の組織成長やビジネス発展が期待できます。
顧客が走り方を習得して顧客個人の動機づけに成功すれば、カスタマーサクセスの想定を超えた顧客とのコラボレーション効果が生まれる可能性があります。
そうなればCSMが最大限のパフォーマンスを発揮した結果といえるでしょう。
熱量をどう測っていくのか?
顧客が走りたい気持ちが大きくなればなるほど、すなわち熱量が多ければ多いほど顧客伴走が生み出す成果は大きくなります。
この「熱量」といった数値化が難しいものを、どう可視化し管理するかは非常に難しいテーマです。
だからこそ取り組む価値は大いにあるでしょう。
例えばこれまで「個人の特性」といった定量化が難しい分野もパーソナリティ診断で定量化すれば、業務に活用できるほど実用性の高い段階にまで発展しています。
熱量を測る有効な方法やヘルススコア設計の定石はまだ見えていませんが、この定石を見いだしたカスタマーサクセス組織は、伴走と代走を駆使した顧客支援により他社を圧倒するパフォーマンスを発揮し続ける組織になるでしょう。